2010年2月9日火曜日

「自分と同じような人」の信頼性を希薄化するソーシャルメディア:知り合いや仲間を信頼する割合が低下したことを示すデータ


PR会社のエデルマンが10回目となるTrust Barometer(信頼の指標)調査を発表しました。それがちょっと驚きの結果だったので、AdvertisingAgeの記事からご紹介。

上のチャートが今回の調査のハイライトといってもいいでしょう。


2008年にはほぼ半数の45%だった、企業に関する情報源として、知り合いや仲間を信頼するという割合が25%まで低下

the number of people who view their friends and peers as credible sources of information about a company dropped by almost half, from 45% to 25%, since 2008.

伝統的メディアであるテレビや新聞の信頼度低下は織り込み済みといってもいいかもしれませんが、消費者自身の信頼度低下というのは、ソーシャルメディア・マーケティングの根底にある概念を覆すもので、驚きの結果と言えます。ちなみに調査は日本を含む22カ国の4,875名を対象に電話調査で実施されたもの。)

この結果の通りであれば、企業、代理店、ソーシャルメディア・プラットフォーム等、全ての関係者にインパクトを与えることになります。

原因は何か?

その一つとして考えられるのが、皮肉にもソーシャルメディアそのものだと記事は伝えています。


場合によっては、ソーシャルネットワーク自身が信頼の低下を生みだしているといえます。FacebookやTwitterのようなプラットフォームは人々がよろ大きな、緩やかな繋がりを保有することを可能にした一方、それ自体が仲間同士の繋がりを「希薄化」してしまったとも言えます。つまりより多くの繋がりを持てば持つほど、その人を信頼するのは難しくなる、ということです。

In some cases, social networks themselves may be contributing to the decline in trust. Platforms such as Facebook and Twitter have allowed people to maintain larger circles of casual associates, which may be diluting the credibility of peer-to-peer networks. In short, the more acquaintances a person has, the harder it can be to trust him or her.

もうひとつ考えられるのが、背後にある企業の存在に消費者が気づいていること。



人々は影響力のあるブログやツイートの背後にいるマーケターの存在が増している事実を理解しています。マーケター自身が積極的に作り出した開示ルールがあろうが、消費者は影響力のある人々が、ポジティブな推薦を書くことで何らかの利益を企業から享受していると感じているのかもしれません。

People have caught on to the fact marketers are increasingly behind that influential blog post or tweet. Despite regulations regarding disclosure of marketer-driven efforts, consumers may feel that whatever it is these people are receiving from companies positively influences their endorsements.

では逆に信頼度が上がったのは誰か?それはCEOなどの一定の権威のあるカテゴリーでした。


CEO:26%(2009年は17%)
政府関係者:27%(2009年は22%)
経済/業界アナリスト:52%(2009年は46%)
NGOの代表:44%(2009年は42%)
学者:64%(2009年は61%)

受け取る情報があまりにも多くなりすぎ、またマーケターによるソーシャルメディア活用が多くなりすぎたために、「自分と同じような人」ではなく専門家や企業トップの生の発言の信頼性が相対的に増した、ということなのでしょう。

これらの結果についての見解が興味深いものになっていますので最後にご紹介します。


エデルマン社長兼CEO Richard Edelman氏
過去18カ月における様々な出来事が影響を及ぼしている。消費者は異なる場所や異なる人々(専門家や仲間、会企業の従業員など)からメッセージを受け取らなくてはならい。今は不信の時期に入っている。だから企業が仲間同士の繋がりを軸にしたマーケティング活動をこの状況下で行うことは良いことではあるが、同時にそれが唯一のソリューションではなく、解決策の一つにすぎないことを理解すべきだ。

Richard Edelman, president and CEO of Edelman,
"The events of the last 18 months have scarred people," Mr. Edelman said. "People have to see messages in different places and from different people. That means experts as well as peers or company employees. It's a more-skeptical time. So if companies are looking at peer-to-peer marketing as another arrow in the quiver, that's good, but they need to understand it's not a single-source solution. It's a piece of the solution."

伝統的メディアも含め総不信に陥っている状況を見れば、単一手法には頼れないというのはごもっともな見解。ちなみにエデルマン氏は先にあげた「希薄化」の原因の一端がFecebookやTwitterにあることは「間違いない」と述べています。


360i の新興メディアディレクター David Berkowitz氏
あまりにも多くの情報を目にしたら、それらは簡単に捨てられてしまう。それこそが、現在のマーケティングメッセージが抱えている問題。

"When you're seeing so much noise, it's very easy to dismiss a lot of it, and that's a problem marketing messages have had for a while now," said David Berkowitz, director-emerging media for 360i.


オムニコムグループ社長兼CEO、WOM マーケティング協会代表 Paul Rand氏
口コミはこれまで以上に効果的になるが、状況が変わった。「誰かの考え方だから信用できる」という考え方はもう通用しない。これからは「私の知り合いの情報だから信頼できる」になる。 

Not surprisingly, Paul Rand, president-CEO of Omnicom Group's Zocalo Group and president of the Word-of-Mouth Marketing Association, said word-of-mouth is more effective than ever. But he does concede the game has changed.
"The mind-set is no longer 'I can just trust it because it's somebody's opinion,'" he said. "It's, 'I can trust that specific opinion because it's someone I know.'"

先日「コラボレーションの真の価値は「ゆるい繋がり」から生まれる:150を限界とするダンバー数とは異なる世界観」というエントリを書きましたが、コラボレーションではなく「信頼」の指標としてはダンバー数は当てはまっているのかもしれないですね。

















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