2011年10月24日月曜日

雑誌広告を8割カットし、リアルタイムマーケティングに投資したリゾート経営企業Vail Resorts

(この映像は、映画Brave Heartの戦闘シーンですが、なぜその映像を引用したかは、このエントリの最後にご説明します)

伝統的なマス広告をやめ、ソーシャルメディアに予算をシフトする。記事などでよく見かける話ですが、実際にマス広告を一気に取り下げ、それをソーシャルメディアに寄せた、という事例は(短期的なキャンペーンを除くと)あまり多くはないと思います。

ところが、そんな事例の一つとして、北米で有数のスキーリゾートを経営する、Vail Resortsのケースが紹介されていました。年商10億ドルのVail Resortsは、ライフスタイル誌やスキー専門誌などの雑誌メディアにとっても重要なクライアントでしたが、雑誌広告を80%削減し、ソーシャルメディアなどのリアルタイムマーケティングに予算をシフトしたそうです。

なぜか?

理由は単純明快で、顧客の意思決定がよりリアルタイムに変わってきたため、だそうです。

世界的な金融危機や、ソーシャルメディアの興隆によって、6ヵ月程度だった予約期間が2〜3週間に縮まり、部屋の利用率はクリスマスの2週間前に50%から80%に急上昇した。顧客の意思決定はよりスピーディになり、マーケティングやPRの戦略・戦術の変更をしなければならなかった

雑誌広告を行う場合、4〜6ヵ月前から出稿を約束し、制作にはいらなければならないため、実際に顧客が意思決定をする時期に本当に伝えたいメッセージにはならない、だから雑誌広告をやめ、リアルタイムマーケティングに移行したそうです。

Vail ResortsのCEO、Rob Katz氏は、PR、(伝統的な)広告、ソーシャルメディアの各グループを協力させ、ウィークリーベースでのメッセージカレンダーに基づいてマーケティングを行ったそうです。そのメッセージ自体も周りの状況や競合の動きに合わせて変化させ、

PRやソーシャルメディアでのメッセージ発信
新聞広告やバナー広告
SEO

などを行い、雑誌広告に行くはずだった予算を使い切ったそうです。

顧客の意思決定の変化に合わせたマーケティング施策の変更を、ここまでわかりやすく行ったケースはあまりないのではないでしょうか?

また、チャネルの変更と同時に重要だったのが動画の存在だったそうです。

スキーをする人はスキーの動画を見るのが好き

雪の粉が舞い散り、スキーヤーがジャンプをするスリリングで美しい動画。そして動画は、いうまでもなくソーシャルメディアでの人気コンテンツです

さて、冒頭に映画Brave Heartの動画を引用した理由に戻ります。

Vail Resortsがマーケティング方針をリアルタイムマーケティングに転換して雑誌に投下していた予算を留保し、一方で競合がマーケティング活動を始めているのを見ながら、「その時」が来るのを待っていた時の心境は、敵が迫ってくる中、ギリギリまでタイミングをうかがっていた映画Brave Heartの戦闘シーンのようだった、という感想を、CEOのRob Katz氏は持っていたそうです。

その心境を語った公演の映像は↓でご覧いただけます(当エントリはその公演の抜粋です)。

この事例、最後にどうしても気になるのが成功したかどうかですが、残念ながらそこまでは触れられていませんでした。

ただ、IR資料を見る限り、スキーヤーの訪問客数は、2010年度から2011年度で16.3%増加しているので、成果は上がっていると考えていいのでしょう、たぶん。

Total Skier Visits










6,991


6,010

16.3

%

Posted via email from the Public Returns - 続・広報の視点

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