2010年8月16日月曜日

ソーシャルメディア × PR について考えてみたこと:情報の信頼性、リーチからソーシャルグラフへ、マスへの波及、リリースに向かない情報、ターゲットへの情報伝達



via  flickr.com
@mediaologic さんこと高広氏のエントリ、「ソーシャルメディアを使わない人もいる、という前提で、このメディア上の”PR”というものを答えてよ。」を読み、「ソーシャルメディア x PR」を自分なりに整理したくなりました(といっても、「ソーシャルメディア x PR」講演会に参加していないので、見当違いな箇所はあるかもしれませんが)。 

特に以下の部分

PRとはその名のとおり「Public」であり、しかしながらソーシャルメディアというものは限定的なユーザーによるものだ。
このギャップについて「PR業界」の人たちがいかに答えるのか、またPRをどう再定義するのかについて、非常に興味があったのだ。

これまでPRが主戦場としてきた”メディア”は”メガホン”のような存在だった。メッセージを届ける”武器”が(PR側が別に自らそういうメディアを構築せずとも)非常に大きなリーチを持っていたからこそ、「Public Relations」となったわけで、じゃぁソーシャルメディアの場合はどうなのよ。と。 

については、最近メディアリレーションに割く時間の割合が減っていいるものの、PRで飯を食ってきたものとして、自分なりに考えを整理しておきたいな、と思いました。

◆情報の信頼性
まず最初に、話をわかりやすくするために広告と広報の違いを比較することにします。昔からよく言われる広告と広報の違いで代表的なものは、

広告=事業会社側からの一方向的な情報発信
広報=報道という第三者の目を通しての情報発信

という部分で、「第三者の目を通している」という時点で、いわゆる宣伝よりも情報の信頼性が生まれる、というのが広報の特徴の一つです。

ちょっと古いデータですが、 凸版印刷の消費行動研究の調査結果によると、もっとも信頼できるメディアとして「新聞の記事」が20−50代すべてにおいて1位でした。広告の中では新聞広告の信頼度が高く、各年代平均して4−5位という感じです。


ソーシャルメディア上でもPRとして期待するのは情報の信頼性です。

マスメディアとソーシャルメディアとでは、

「企業からの情報を語るのが専門家としての記者か、自分に近い立場の一般ユーザーか」

という違いはありますが、いずれも企業としては自ら作り出すことができない第3者からの情報発信で、信頼性を持たせることができるようになります。また、情報を語る立場の違いがあるので、両者が補完的な役割を果たすということも期待できます。

◆リーチからソーシャルグラフへ
 「メガホン」としてのマスメディアに対し、ソーシャルメディアはいわば「ロングテール上の糸電話」のようなものです。リーチと媒体の違いを(新聞を例に使いながら)挙げてみるとこうなります。

全国紙:リーチが最も大きいが、記事内容は一般的
専門紙:リーチは特定の業界内に限定されるが、記事内容は専門的
ポータルサイト:オンラインでの広いリーチ、専門サイトの配信記事で内容も深い
専門サイト:専門紙同様、業界に対するリーチと専門的な記事内容
ブログ:オープンなプラットフォームで人気ブログならリーチは専門サイト並み
SNS/コミュニティ:ソーシャルグラフがリーチの基盤となる

もちろん様々な例外はありますが、概ねこのように整理することができると思います。

ではソーシャルメディアを使わない人がいる状況でなぜそこにPRが関与しようとしているのか、ですが、単純に言ってしまうと、ソーシャルグラフへの期待があるからです。もちろんソーシャルメディアにまだ参加して人は多いですが、参加している人の情報交換(クチコミ)は、(バーチャルなものも含め)知り合い同士によるものなので、企業から見ると、情報が熱を帯びた状態になる、ということを期待できます。


◆副産物としてのマスへの波及
例えば、スポーツ紙を読んでいない人も世の中にはたくさんいますが、それでも掲載を狙うのは、読者の中にターゲットがいるからであり、同時にテレビの情報コーナーで取り上げられる可能性が高くなるから、という2つの理由があります。

同じようにソーシャルメディアで盛り上がっている情報やそこでの発言が、テレビや新聞で取り上げられる、ということも起きているので、マスでの掲載狙いとしてのソーシャルメディア活用という視点もあります。

◆直接的なコミュニケーションによる関わり合いの深化と補完
Twitterを使っていて、企業から直接話しかけられた、という経験がある人は少なくないでしょう。ちょっと極端ですが、例えばこれはどうでしょう。
 

この方が実際携帯キャリア変更をしたかどうかは知りませんが、この直接的な関与は大きな後押しになったと想像できます。

これまで企業の中の人にとってPRでの出番は主に、会見かインタビューでした。ソーシャルメディアでは対象となる人と直接会話をすることで、関係性を深め、マスメディアを通じて語られていることを、強化・補完することができます。

◆リリースに向かない、ソーシャルメディア向けの情報
たとえば新製品発表を控えていて、その情報をどう展開していくかという場合、既存顧客にはいち早くお伝えして、次も買ってもらえるようにしたい、というのは企業としては当たり前。そこでプレスリリースが出る前に、一部の情報をターゲットに対してティーザーとして小出しにしていく、ということもできます。もちろんメールでもできますが、メールが毎日届くとしたら、あまりありがたくないと思います。それがTwitterの短いメッセージならどうでしょう。また、プレスリリースにするほどでもないが、顧客には有益な個々のセールス情報などは、ソーシャルメディアで伝えるのに適した情報といえます。


◆最後はやっぱりターゲットへの情報伝達
冒頭の問いに対して、答えているとはいえない感じもありますが、やはりここは当然のポイント。予断になりますが、PR担当でありながら、筆者はメディアリレーション以外に日ごろ、パートナー企業サイトとのタイアップを企画・運営しています。具体的にいうと、自社のコンテンツを無料で提供する代わりに(オンライン上での)露出と、自社サイトへのトラフィックの獲得、というのが共通するスキームです。

これはPRマンの自分にとっては、新聞や雑誌のプレゼント枠での露出獲得を狙った「プレゼントパブ」と同じ。

では、なぜこんなことに時間を費やすようになったかというと、そこにターゲットがいるからであり、伝統的なメディアでの露出ではターゲットにリーチできないからです。

「日経で記事になります!」「それは結構。で、ターゲットにその情報は届くの?」

PR代理店勤務だった筆者が、今の事業会社に入ってからボスによく言われたことです。

ソーシャルメディアでも同じで、そこにターゲットがいるとわかっているなら、参加して、伝えたいことをウザく無い形で届けよう、というのは自然な流れ。eメールによるニュースレター配信を一部で停止し、ソーシャルメディアに移行した企業も出てきました。情報の受け手としてもソーシャルメディアへのシフトはユーザーにとっても受容しうる変化だと思います。

記者とPR担当の関係も少し変わってきています。両者がソーシャルメディアでつながることで情報交換がスピーディになり、親密感も増します。


ソーシャルメディアに対する期待やその使い方はまちまちなので一概には言えないこの、「ソーシャルメディア x PR」というテーマ。自分の中では今こんな風に考えているということを整理してみました。 

最近ではブロガーリレーションの会社が記者会見を仕切ったりするように、マーコムの仕事の境界線そのものがどんどん溶解してきています。自分自身、仕事の内容がいわゆる「PR」ではなくなっていますが、これもまた自然な流れかな、と思って楽しんでいます。


ご参考: 
Posted via email from Capote's Connected Communications - 続・広報の視点

USTREAMばりの機能を持つ「Facebook Live」が登場:5億人の視聴者をもつ放送局の誕生


この画像、USTREAMではありません。
つい先日(米国時間の13日)、ローンチされた、Facebook Liveです。

今流れているのは再放送で、Facebookのオフィスに訪れた、ドラマ「アグリー・ベティ」の主演で有名なAmerica Ferreraさんへのインタビュー。

画面を見ると分かるように、質問やチャットの機能もあります。

単純な言い方をすると、5億人の視聴者を持つ放送局の誕生ですね。

スタジオがFacebook内にあるので、いつでもどこでも、というわけにはいかなそうですが、インタビュー、製品デモ、ミニライブ演奏など色々なことが行われていきそうですね。





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