2010年12月20日月曜日

「医師という消費者」と会話をする製薬業界から学べること



via flickr by Michael Flick

製薬会社にとって(大衆医薬品を除くと)コミュニケーションのターゲットは一般消費者ではなく、ドクター。いうまでもなく高学歴で権威もあり、いわば特殊なコミュニケーションターゲットといえます。

多くのデータが可視化され消費者が賢くなる今の時代のコミュニケーションを考える際に、医師とのコミュニケーションから学べることもある、という内容のエントリがあったのでご紹介。

あなたは一般消費者で、私は製薬業界の人間。私達は違う世界に住んでいます。
私の世界では、Bud Lightの広告はこうなります:「血漿中の効果的なレベルに簡単に滴定!用量反応を予測可能!血液脳関門効率的に通過!」
脳外科医のように高い教養のある人にものを売るコミュニケーションとしては、もちろんこれではダメなわけで、3つの考え方が事例とともに示されています。

1. Be real.(現実的であること)
Betaseron(多発性硬化の治療に使われてきた免疫システム変調器)という製品にかかわっていたころ、神経科医が競合製品を使うようになっていることに気がつきました。なぜなら競合がBetaseronの副作用を競合が盛んに謳っていたからです。でも私達の製品は早期に使用されれば非常に効果があることを証明できました。そこで私達は顧客に対してこういったのです。

「私達は多発性硬化に積極的に取り組んでいます。いくつかの有害な事象(副作用)もありますが、多発性硬化の治療に携わっているなら我々の製品を使うことを真剣に検討するべきだ。」

そして決して言わなかったこと、それは、「副作用は気にしないでください。」

結果、マーケットシェアが15%増え、キャンペーン初年度の売り上げが10%伸びて6000万ドルになりました。


2. Add (real) value.(現実的な付加価値を加えること)
肝性脳症という危険で治療にフラストレーションのかかる疾患で使用するXifaxan550では、医師が(肝性脳症を引き起こす)肝不全の治療の方に専念していることがわかりました。患者が肝性脳症の薬物療法を指示された通り行っているかを確認する時間がなかったからです。

そこでひらめいたのが、肝性脳症の患者のサポートを、医師の追加スタッフのように行うプログラム。

Xifaxan550のメーカーが運営するHELPと呼ばれるそのプログラムは無料で、患者向けの教材や共同支払い支援、治療継続支援、24時間トールフリーのホットラインなどが利用できます。

私達が患者の求めるサービスを提供することで、12000人ターゲットがいるうち、3000人の医師がサインアップし、プログラムは現在大成功を収めています。



3. Know to whom you're talking.(話をする相手を知ること)
科学的データを使って販売するとき、単にデータを見せ、「いかがですか?」とやりたくなる。なぜなら相手は医師だから。

でもこれは間違いです。

しばしば誤ってしまうのが、顧客はあなたの製品に対して、それぞれ異なることを知りたがっている、ということです。我々のデータは、医師によって実に多くの異なる視点で見られていて、そこにもちろん細心の注意を払う必要があります。






医師のように、頭がよく、権威もあり、そして批判的な「消費者」に対しても、こうしたアプローチを通じて、ロイヤルティを獲得できる、というお話。

今の利口な消費者とのコミュニケーションにも共通する、普遍的な真実が含まれていると思います。






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