2012年7月30日月曜日

FacebookのOpen Graph経由のシェアは1日10億:決算発表で語られたWebを超えて広がるOpen Graphのビジョン




ストックオプション報酬費用計上で、増収ながら赤字となったFacebookですが、その決算発表資料で明らかにされていたのが、

Spotify, Netflix, Pinterest, FourSquare, Instagram, Arabian Bead, Tumble, VD, Nike+, SongPop その他数1千以上のアプリがOpen Graphと連携しており、より多くのソーシャルな体験を生み、ユーザーを増やしてきました。既にOpen Graphを使って共有されるコンテンツは1日あたり10億近くになります

というOpen Graphの利用状況に関するもの。

ユーザーの reading, watching, listeningなどの行動をタイムラインやティッカー、ニュースフィードに共有するのがOpen Graphを使ったアプリですが、1日あたり10億という数字は凄いですね。

この数字は、以前「Facebookが始めると噂されているニュースサービス"Facebook editions"は、「シェアの法則」を実現するもの:共有を加速するキラーコンテンツとしてのニュースサービス」というエントリでもご紹介した、「次の5年、Facebookにとって重要となる指標は、人々が得た価値の量、費やした時間、アプリの数、動かした経済などだ。」というMark Zuckerberg氏の発言を裏付けるものといえるのでしょう。

現状では、ゲームアプリ以外にここからのマネタイズは、ほぼできていないようですが、そのことに関して、Zuckergerg氏が会見で語った見解が、Inside Facebookで次のように紹介されていました。

Open Graphは、Facebookの全体戦略のコアであるとZuckerbergが繰り返し説明しているように、Facebookの成長にとって重要な特徴です。Zuckerbergはまた、Facebookのプラットフォームの構想は、「人々が理解している以上に大きい」と説明した。彼はFacebookはWebそのものよりも拡大すると信じており、次のようなことを話した。「将来の可能性として、車を購入し、Facebookにログインすることで、車がお気に入りの音楽や友人の住所、自分の好きなレストラン、友人が訪れたことのある場所を取り込むようになる。

確かにOpen Graphを使ったアプリが充実し、共有されれば、こういうことが現実になるのかもしれません。

さて、現状Open Graphを通じての収益はほとんどがPCベースのゲームによるもののようですが、今後は、Open Graph経由で得られた収益の何パーセントかを課すことを検討しているとのこと。

課金方法については、現在Facebookが収益の中核をなしているゲームの場合30%だが、メディアやコマースアプリの連携ように、ソーシャルな体験による差異がより小さななものについては、より低いフィーになるだろうと、Zackergerg氏は言っているそうです。

日本でもメディアなどを始め、Open Graphの活用をビジネスとして検討し始めてもいい時期かもしれないですね。

ご参考:











2012年7月24日火曜日

FacebookががGoogle検索を抜いて、ニュースサイトへのファラーのトップに:BuzzFeedによる調査



via  buzzfeed.com

LOLや、omg、cute、geekyなどのカテゴリーからなる、エンターテイメント性の高い情報を提供するニュースサイト、Buzz Feedが、初めてとなるレポート"Social Intelligence"を公開しました。

なかでも特徴的なのが、上のチャート。

Buzz Feedの多岐にわたる、約200のニュースサイト(合計リーチは3億)を対象にした調査の結果、FacebookがGoogle検索を抜いて、ニュースサイトへのリファラーのトップに躍り出た、というもの。

Facebookからのリファラートラフィックは2011年1月から堅調に伸び、6月に後退したものの5月には初めてGoogleのリファラートラフィックを超えた。5月Facebookは6100万のリファラーを、Googleは5800万のリファラーを出版されたデジタルコンテンツに対して生みだした。(via nytimes.com)

Facebook対Googleを語る上でよく引用される(されてきた)のが下の訪問者数のグラフと、GoogleニュースとFacebookのメディアサイトへの訪問割合ですが、


メディアのコンテンツへのリファラーにおいて、Facebookが「Google検索」を抜いたという調査データを観るのは、私は初めてでした(同様の調査結果は他にあるのかもしれませんが)。

ただ、このデータはBuzzFeedの"Viral tracking system"を適用しているパートナーサイトに限られていることと、掲載されて1週間(バイラルが発生する一般的な期間)のコンテンツを対象にしている、ということが注意点でしょう。

その他、Social Intelligenceの内容で公開されていたものを以下に。

Facebookからのトラフィックの伸びは年間で84%
Pinterestは163%成長
Twitterは95%成長
検索エンジン全体は12%低下


ご参考:










2012年7月17日火曜日

TwitterはFacebookのように閉鎖的なサービスになるのでは?という噂:LinkedInへのAPI制限はその一環



Twitter、サードパーティーによるツイート表示に制限 まずLinkedInで終了」 というニュースが先月末出ており、ご覧になった方も多いと思います。この記事は、

TweetieとTweetDeckは買収して公式アプリにし、「サードパーティーは公式クライアントをまねたTwitterクライアントアプリを開発すべきではない」と発言したり、サードパーティーによるタイムラインでの広告ツイート表示を禁止するなど、サードパーティーに対する制限を段階的に厳しくしてきている。

という締め方をしていましたが、この動きは、Twitterが、Expanded tweetsの導入し、検索機能の強化するなどのアップデートにより、Twitter上での体験をリッチなものにしてメディアプラットフォーム化を強め、広告によるマネタイズを目指していることと合致します。

数か月の内に大きな変更が予定されており、それによってTwitterは開発者に人気のオープンプラットフォームから、Facebookのような閉鎖空間へと向かう事になる。

今回のLinkedInとのAPI連携に制限を加えたことに関して、詳細については書かれていないものの、関係者の発言として上記コメントが「TwitterはFacebookのように閉鎖空間への道を進む」という記事の中で引用されていました。

同記事ではまた、

Twitterは、オープンウェブと繋がっていない、閉鎖空間にはならないでしょう。しかし、サードパーティクライアントよりも、ユーザーが自社の企業のウェブサイト、モバイルアプリを通じてアクセスするFacebookのような閉鎖的なエコシステムが、大手ブランドの広告主を惹きつけ有意義な収入を生み出すにはベストである、と同社の幹部は考えている。

という見解も示されていました。

TwitterはこれまでAPIを公開することで様々なサービスが開発され、それを通じてTwitterの利用者層が拡大するという歴史的な背景があったことを考えると、この移行は簡単ではないと思われますが、この流れは「無料でユーザーを広げ、後からマネタイズを考える」というサービス展開の一つの典型例と言えそう。

記事内ではサードパーティ各社のコメントが引用されていましたが、ニューヨークに拠点を持つインキュベーターbetaworks社のCEO、John Borthwick氏のコメントを最後にご紹介(betaworks社はTwitterやTwitterが買収したTweetDeckに投資をしていた)。

私はAPIは間違いなくメディアよりも大きなビジネスを生むと考えていますが、その質問は現時点では非現実的でしょう。2年前にTwitterは道を閉ざし、それを続けています。私は彼らが新しいメディアビジネスに成功してほしいと望んでいますが、サードパーティに対して制限を加えるのであれば、彼らには次のことを期待しています。 (a) 素晴らしいクライアントを作る (b) Twitter上に価値あるサービスが開発されること対価としてサードパーティがAPIにアクセスできるようにする。これはゼロサムゲームである必要はないでしょう。

ご参考:










2012年7月9日月曜日

Facebook投稿のリーチ数平均12%を、ページのLike数別に調べたデータ:Likeが1,000名未満なら50%以上



2月末に開催された、Facebookのマーケター向けのカンファレンス、FMCで「あなたのFacebook書き込みは友達の16%にしか届いていない」という驚きの数値が公表されて以来、リーチできる人たちといかにEngagementを深め、それによってエッジランクを高めつつ、シェアやいいね!を通じて16%の環の外へとリーチを広げていこう、という志向に変わった企業も多いと思いますが、この数字はあくまでも平均値。

補足しておくと、実際には16%ではなく12%とのちにFacebookが訂正しています。

3/5 アップデート:ユーザーの投稿が友人にリーチする平均値が16%だということをFMCで何度も確認したにも関わらず、ユーザーによる投稿の友人リーチは平均12%、とFacebookから連絡があった。この記事のタイトルも16%から12%に修正した。

さて、では平均が12%であるならば、FacebookページのLike数が多くなるほどEngagement率が下がるのは分かっているので、規模が小さなページならリーチする割合も高いはず。

ということで、Facebookページの分析サービスを行うEdgeRank Checkerが、14,000のページを対象に行った調査結果が公開されていました。

それが下の図になるわけですが、

例えばLike数が

1,000名未満の場合は50%強のリーチ1,000~5,000未満なら30%のリーチ
5,000~10,000未満なら20%強のリーチ
10,000~100,000未満なら20%強のリーチ
100,000~500,000未満なら15%強のリーチ

で、50万を超えると10%程度に落ち込み、2500万を超えると、もう3%ぐらいにしかリーチしないように見えます。

16%や12%という数字を基準にKPIのチェックをしていた企業は、この数字を参考にしてみるといいかもしれません。

こうした数字を見るにつけ、Facebookページが大きくなるのに合わせて、地域別やサービス別に細分化を図っていくことも(費用対効果を鑑みつつ)必要なんだろうな、と思います。

ご参考:









2012年7月2日月曜日

インハウスでPRをやるようになって変わったこと




最近PRの仕事を卒業された庄司さんのエントリ「転職しました1/3 : PR会社でのデジタルビジネスの立ち上げについて」シリーズ 、それへのオマージュである赤い人のエントリ「少し時間が経ったし、書いてみようか…。」シリーズ、最近公開された高広さんの記事「アメリカで注目を集めている“Inbound marketing”とは何か(3)」を立て続けに読んでいい刺激をいただきました。

私がPR代理店をやめ、インハウスのPRとして仕事をするようになってから5年近くになります。

新規事業の立ち上げに携われる、ということが今の会社に入社する直接的な動機だったわけですが、今日はインハウスでPRをやるようになって変わったことを書いてみたいと思います。

1. コミュニケーションの対象
現在の会社に入社し、新規事業の立ち上げの第一段階が終了しようかというころに、とある週刊経済誌と、複数ページにわたる取材の企画が持ち上がりました。これはいい話と思い、企画の概要をまとめて実施の申請をしたところ、当時私の事業部のボスであった人から言われたのが「いい話だけど、そこで記事になっても直接のターゲットである若い女性層には届かない」という一言で、企画は却下されました。

PR代理店の感覚としては「こんないい話なのに」という思いがあり、経済誌の記者の側も取材を断られたことに対して、「まさか」という口調で非常に驚かれていました。

私が現在所属している組織が、 顧客との接点を直接持って サービスを提供する部門であることも関係しますが、「誰に向かってコミュニケーションするべきか」についての変化が生まれたできごとでした。(補足:大手経済紙での掲載は間接的にターゲットに届く事が期待でき、新規事業のメジャー感の醸成などの効果があるので、全く意味がないということはありません。)

2. ネタの考え方
コミュニケーションの対象に続いて変化が発生したのは、コンテンツとなるネタに対するアプローチの方法。

実は従来のマスメディア向けのネタ作りにおいても、基本的には読者や視聴者に受けるかどうか、という視点を加味して提案するので、考え方の根本が大きく変わったということではないのですが、特にソーシャルメディアをはじめとするここ数年のメディア接触の変化に伴い、よりダイレクトに既存/潜在顧客向けにどのようなネタを提供すべきか、という視点が加わりました。

対マスメディア向けの情報提供において、プレスリリースの情報そのままではなく、テレビや雑誌などに取り上げられやすいように、社会的背景や、調査データ、ユーザーの声などを加えた資料を作成して提案することがあります。最近ではそれに「プロモシート」という名称が与えられているようですが、要するに、プレスリリースとは異なる情報のパッケージにしてマスメディアにアプローチをとっているわけです。

ではソーシャルメディア向けにはどうしようか、という話になるのですが、最近とあるマーケターの方が話していたことが分かりやすかったので、それを例にとると、

「もしドラ」は、ドラッカーの「マネジメント」を売るための「メディア(媒体)」
「ハイボール」は「ウィスキー」を売るための「メディア(媒体)」

ということになります。こうした定義は後付けのものかもしれませんが、新たな顧客層に販売するために、より受容されやすい形をとり、それを「媒体」として、本来の販売目標を達成する、という売り方です。

これはそのままコミュニケーションにも置き換えることができます。

先にあげた例で言うと、プレスリリースではなくプロモシートを「媒体」として特定のマスメディアにアプローチをとるように、ソーシャルメディアで対象としたい層に自分事化されやすい、relevantな「媒体」を生み出してコミュニケーションをしよう、ということになります。

別の言い方をすると、あるサービスのメッセージをそのまま伝えるのではなく、そのサービスにまつわる会話やinteractionをソーシャルでスパークさせる、そのための「媒体」が何かを考えよう、ということです。

3. 落とし所のバランス感覚
代理店側ではなかなか把握できなかったのが、この落とし所の感覚だと思います。

例えば、大ヒットし、カンヌも受賞した「ISパレード」というtwitterキャンペーンが以前ありました。

それ自体はtwitterでの新しい体験を提供した素晴らしいものでしたが、この企画に参加した人が、「AUのスマートフォン、ISシリーズ」というものをどの程度認識したかについては疑問です。

twitter上でのエンターテイメントとしては成功を収めたこの事例も、キャンペーン目的がAUのISシリーズの認知獲得であった場合、「媒体」としての役割を果たせたかどうか、という視点で見ると、成功とは言えない可能性がでてきます。

他にもキャラクターとのコラボのように「媒体」自体が強すぎたり、本来伝えたいものとの距離が離れすぎていると、「バズったはいいけど、認知向上にどれだけ貢献できたの?」ということが発生します。

この落とし所に対するバランス感覚は事業会社やサービス、コミュニケーションのフェーズごとに異なるところだと思いますし、「話題になればそれでいい」という場合もあるでしょうが、それは本当にやるべきことなのか、ビジネスに対しての貢献ができるのか、ということは企画をする上で常に念頭に置いておくべきことです。

この距離感や落とし方に対する感覚が身についたのもインハウスで働くようになったからだと思いますし、冒頭で触れた当時のボスの一言があったからだと思います。

一方、マスメディア向けのものであれ、ソーシャルメディア向けのものであれ、事業会社の中のひとが企画すると、「こじんまり」したものになってしまう傾向があるのも確かなので、多少的外れであったとしても、新しいテクノロジーを活かした企画や、Out of boxな提案がもたらされることについては、代理店さんに常に期待しているところです。

とまぁ、当たり前と言ってしまえばそれまでのことばかりですが、いい刺激を受けたのと、最近思うところもあったので、まとめてみた次第です。

ご参考: