2012年2月27日月曜日

ソーシャルグラフとインタレストグラフを合わせて「発見」を提供するStumbleUpon:デジタルでできていないことは需要喚起




主要SNSからの誘導率を示したこのチャート、ご覧になった方もいるかもしれませんが、その多くは「Pinterestが凄い!」という文脈だったのではないでしょうか?

今日はPinterestではなく、このチャートの2位、StumbleUponのお話です。

StumbleUponは、セレンディピティ型SNSとも"Web discovery engine"とも呼ばれるもので、「Stumble! ボタン」を押すだけで、自分の気になるジャンルで、だれかが推薦している人気のあるエントリーやサイトが次々と現れてくる、というもので、時期によってはFacebook以上にトラフィックを生み出していました

StumbleUponは昨年12月にリニューアルし、これまで以上に簡単に興味のあるコンテンツに出会えるように改修され、その月は12億の誘導を生み出したそうです。

さて、そのStumbleUponのインタビュー記事が興味深い内容だったのでご紹介。


StumbleUponは、ユーザーが興味を持つコンテンツや刺激的なコンテンツ、ためになるコンテンツを発見することを可能にするサービスです。私たちは、発見(discovery)は、いま非常に重要なことだと思っています。多くの情報があふれ、人々はそれを負担に感じてます。私たちのプラットフォームを使うことにストレスはかかりません。あなたは"stumble"ボタンを押すだけでいいのです。

↓がそのstumbleボタンですが、ボタンを押すたびに面白いコンテンツが次々と現れます。まさしくStumble upon(偶然出会う)、というわけですが、筆者が昨年12月にPinterestを紹介した時にも書きましたが、この思想はPinterestにも受け継がれていると思います。


このインタビューを読んで面白いな、と思ったのは実は「ストレス」の部分です。インタビューでは、情報を検索した時に表示される10〜20のリンクをチェックしなければ、ということによるストレス、という意味でつかわれていましたが、いわゆるSNS疲れのようなストレスなく情報に出会える、というのもこのサービスのポイントの一つだと思います、。


さて、StumbleUponのインタビュイーはGoogle出身とのことでGoogleを引き合いにサービスの説明をしているのですが、それを読むと彼らが実現したいことは、実はGoogleができていないことなんだなぁ、と思わされます。

私たちは発見というコンセプトに基づいて全ての物事を進めています。それに対する明確なニーズがあると思っているからです。人々は好きなコンテンツを消費したいと思っていますが、今行われているのとは異なる方法が色々とあります。ソーシャルグラフとインタレストグラフの両方を一緒にすることで、私たちは私たちのコミュニティーのユーザーに対して、ストレスのなくコンテンツ消費ができる環境を提供しています。そして究極的には人々が素晴らしいコンテンツを発見した時に彼らがしていることは、外に出て共有していることなのです。そうすることでコンテンツがソーシャルな環境で増殖していくのです。
デジタルマーケティングにおける一つのおかしなこと、それは需要の充足(demand-fulfillment)についてはよく取り組んでいるということです。私たちはGoogleにいた頃その問題に何年も取り組み、需要を満たすことについては非常によくできていると自信を持っています。私たちがデジタルマーケターとして本当にできていないこと、それは需要を喚起(demand-generation)する側のことなのです。

StumbleUponのユーザーは英語圏が中心っで、85%が北米。これも他のグローバルにSNSと異なる点ですが、

2012年には、グローバルに展開する予定です。

とのことなので、日本でも普及する日が来るのかもしれませんね。













2012年2月21日火曜日

F-commerce、海外では閉店がチラホラ:売場ではなく、コミュニケーションの場としてのFacebook




最近日本でも現実味を帯びてきたものと目されている感のある「ソーシャルコマース」。

Facebookのようなソーシャルメディアプラットフォーム上から直接商品の購入ができるこの仕組み、Facebook上のソーシャルコマース(F-commerce)を始め、国内でも複数のソリューションが登場しています。

一方海外では、このF-commerceを導入したものの、閉店しているところが増えてきているとこのこと。

Gamestopは、自社のビデオゲームファンを自認する350万以上の顧客から収益をえるために、昨年4月にFacebookに始めたストアを、6ヶ月後静かに閉店させました。Gamestopだけではありません。過去一年間でGapJ.C.PenneyNordstormなど、がFacebook上に売場を設けては、閉店させています。(via bloomberg.com)

ネットとの親和性が高そうなゲームもだめ、超有名な小売ですらだめ、ということなのでしょうか。さらに記事によると、GAPの傘下のBanana RepublicやOld NavyもF-commerceの売場を閉じたそうです
調査会社Forrester ResearchのSucharita Mulpuru氏いわく、

Facebookは人々が買い物をする場所に変わる、という期待が大きかったものの、それは友人とバーでの時間を楽しんでいる人にものを売ろうとするようなものです。


とのこと。

Gamestopのマーケティング戦略部門のヴァイスプレジデンント、Ashley Sheetz氏は、F-commerceを辞めた理由を次のように語っています。

私たちは、Facebook上の売場から十分な収益をあげられたなったのそこを速やかに閉じました。私たちにとってFacebookは、顧客に特売情報を伝える場であり、ものを売る場所ではなかったのです。

オンラインでのコマースは既に非常に便利なものとなり、私たちの生活に浸透しています。それを(ただ単に)Facebook内に持ち込んでも効果はあまり見込めないし、使うならその場に適した使い方が必要、という側面もあるのでしょうね。









2012年2月19日日曜日

Facebookで起きている"What People Think / I Do What I Really Do"現象とその分析




オリジナルが作られたのはもう少し前かもしれませんが、 この画像にFacebookで遭遇したのが1月の下旬。

広告業界におけるアカウント担当、クリエイティブ、プランナー、クライアントそれぞれの立場からみたお互いのイメージをビジュアル化したもの。まぁ、クライアントは最悪、ということになりますが、広告業界にいる人にとってはニヤリと笑ってしまうものだと思います。

それから数週間後、2月になるとこんな画像に再びFacebookで出くわしました。


その後、ジャーナリストに続き、ライター、日本、猫、PRコンサルタントなど、続々と類似の画像に遭遇しました。


気になったので調べてみたところ、2/2にGarnet Hertzというアーティストが、Facebookに公開したこの画像が始まりだったようです(via knowyourmeme.com)。


基本的なフォーマットはこの5つで、


最後のWhat I really doがオチという構図です。

この現象、なんだか日本のTwitterでみられるハッシュタグの大喜利にも通じるものがありますね。

さて、この"What People Think I Do / What I Really Do"シリーズ、ソーシャルメディアキャンペーンを考える上で色々と示唆に富んでいるので、それをちょっとまとめてみたいと思います。

職業を題材にすることでにすることでその周りのひとに分かりやすくなっている(猫や日本など、職業以外のものもありますが)
さらに、同じ職業にあたる人にとっては自分事化されやすく、共感を生む(実際にリンクを見るわかりますが、タグ付けしている人もいます。)
最後にオチを作る、という基本的なフォーマットがユーモアを生み、バイラルしやすくなっている
・(Facebookのように)様々な関係が重なり合っているソーシャルメディアと、"What People Think I Do / What I Really Do"のフレームの親和性が高い

という感じでしょうか?

"What People Think I Do / What I Really Do"のようなフレームで、実際に自分やその友人のプロフィールを読み込んでお互いにどう見られているかの結果を(ユーモラスに)しめすアプリがあったら人気が出そうですね。















2012年2月13日月曜日

上場目論見書を通じて明らかになったFacebookのアクティブユーザー数の定義




前回、「Facebookの上場によって2億ドル以上を手にすると言われているグラフィティ・アーティスト」というエントリを書きましたが、そのFacebook上場の目論見書には、例えば下のような同社ネットワークの規模感を伝える数字が色々と記載されています。

月間アクティブユーザー数は8.45億人、12月の1日アクティブユーザー数は4.83億人で、それぞれ対前年比39%および48%増加している。モバイルも今やユーザー基盤の半分を占め、4.25億月間アクティブを数える。他の統計データはやや曖昧で、昨年末の友達つながりが1000億組、同年9〜12月の「いいね!」およびコメントが1日当たり27億回。(via jp.techcrunch.com)

ところが、今回の目論見書の提出を通じてFacebookの規定するアクティブユーザーの定義には疑問が投げかけられているようです

The New York Times内のある記事によると、

Facebookの目論見書の44ページを見ると、そこには同社の"アクティブユーザー"の定義が記載されています − そしてそれは、あなたが考えているものとは異なります。

で、実際に目論見書かれている内容がこちら。

月間アクティブユーザー(MAUs)。私たちは月間アクティブユーザーを次のように定義いています。30日間の測定期間に発生する、Facebookに登録しているユーザーによるログインとウェブサイトやモバイル機器からのFacebookへの訪問、Facebookに連携しているサードパーティのウェブサイトを通じて起こしたアクションによるFacebook上の友達へのコンテンツのシェアや活動。
Monthly Active Users (MAUs). We define a monthly active user as a registered Facebook user who logged in and visited Facebook through our website or a mobile device, or took an action to share content or activity with his or her Facebook friends or connections via a third-party website that is integrated with Facebook, in the last 30 days as of the date of measurement. 

Facebookへの訪問者数、はもちろんいいのですが、Facebookに連携しているサードパーティのウェブサイトを通じて起こしたアクションによるFacebook上の友達へのコンテンツのシェアや活動もMAUに含んでいる、ということは、、、

NFL.comで"Like"ボタンを押すとあなたはFacebookの"アクティブユーザー"になります。FacebookのアカウントにTwitterメッセージを共有しているとすると?あなたはおそらくFacebookのアクティブユーザーになります。Spotifyで友達に音楽を共有したことがあれば?あなたはFacebookのアクティブユーザーになります。Huffington PostにFacebookアカウントでログインし、コメントを残したら − そのコメントは自動的にFacebook上で共有されます − この場合もあなたは「アクティブユーザー」となります。Facebook.com上で全く時間を費やさなかったとしても。(via dealbook.nytimes.com)

うーん、なんか以前どこかで同じような話がありましたね。



ニールセン/ネットレイティングスのコメントにある通り、2011年9月まではmixiの推定訪問者数に外部サイトで「イイネ!」ボタンが表示されたユーザーも含まれていた。グラフにおける濃いオレンジのラインだ。それに対して2011年10月以降はその数値を除外したことで集計値が大きくダウンした。(via media.looops.net)

実際にニールセンの数値と、Facebookの数値にはかい離があるようで、12月のニールセンのUSでのFacebook.com訪問者数が1億5300万ユニークユーザーであるのに対し、Facebookによると1億6100万のMAUだったらしく、

FacebookのUSからのトラフィックの19%に相当することから、Facebookが「アクティブ」とする8億4500万のユーザー数から少なくとも4000万人は少なくなることになるだろう。 (via dealbook.nytimes.com)

とのこと。

ちなみにこの件に関してFacebookに問い合わせをしたところ、「いわゆるブラックアウト期間中なので」コメントを断ったとのこと。
まぁFacebookの圧倒的な数には変わりはありませんが、。


















2012年2月6日月曜日

Facebookの上場によって2億ドル以上を手にすると言われているグラフィティ・アーティスト



先週、Facebookの上場申請のニュースでにぎわいましたが、その上場によって注目を集めているアーティストがいます。

グラフィティ・アーティストのデイヴィッド・チョーという人です。

そのグラフィティ・アーティストは、Facebookの最初の本社の壁画を描いた報償として現金の代わりに株式を受け取るという、賢い選択をした。デービッド・チョーが保有する株式は、今年後半にFacebookが上場した時には2億ドル以上に相当するとみられている。(nytimes.com)

2005年にFacebookはパロアルトに最初のオフィスを構え、デービッド・チョー氏はその壁に壁画を描く仕事をうけました。その時に受け取った株式は同社の0.1〜0.25%とも言われており、現在も保有し続けていればFacebookの上場時価は1000億ドルと目されているので最大2.5億ドルに相当するといえます。

まぁ個人的には、会社の経営に携わらない人に株式で支払うのってどうよ、とは思いますが。

フェイスブック 若き天才の野望」には、アクセルパートナーズというベンチャーキャピタルのケビン・エルフシー氏とアーサー・パターソン氏が初めてそのオフィスを訪れた時の様子がこう描かれています。

2人は新しい壁画が描かれた長い階段を上った。階段を上ったところの壁には、デイグロの蛍光塗料で巨大な犬にまたがった怪しい女性の姿が描かれていた。そこはオープンスペースの広いロフトで、引っ越しはまだ終わっていなかった。壁にはさらに多くの落書きが残っていた−後でこれもわざわざ描かせた壁画と分かった。(P.164)

その絵が、こちら。
David Choe Mural Artist - Facebook offices

ちなみに、デビッド・チョー氏のFacebookオフィスの作品群は、彼のFacebookのアルバムで見ることができます。

また、Facebookは最近新オフィスに引っ越しをしましたが、どうやらそこにもデビッド・チョー氏の作品が飾られているようです。

受付の後ろにはエアブラシで描いたような絵画が掛かり、オフィスに足を踏み入れたところ、落書きかアートか判別が難しいような“作品”も。かつての本社は、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が「創業の地」である学生寮と同じような雰囲気をつくるために壁画を描かせたが、この伝統は新本社にも引き継がれているようだ。(nikkei.com)

デビッド・チョー氏とマーク・ザッカーバーグCEOが、「落書き」を楽しんでいる動画があったのでそちらをご紹介。