FacebookのようなSNSではどのように情報が広がるのか、という問いに対してFacebook自身による、調査結果が公開されていました。
SNSは、嗜好の近い、親しい友達からの情報だけを消費し共有する反響室のようなもので、多様な情報の広がりが起きにくい、という人もいますが、我々の調査はそれとは異なる様相を描き出すこととなりました。実は情報の大部分は、頻繁にやり取りがあるわけではない知り合いから来ていたのです。
それを示しているのが上の図ですが、じつはこの概念自体は経済社会学者のMark Granovetter氏よって1973年に発表された論文"The Strength of Weak Ties"に提示されていたものと同じで、その内容は
人々が自分の親しい知り合いよりも、普段やり取りがあまりない知り合い経由で知った新しい仕事に就くことが多くみられます。強い絆のクラスタの中にいる人々はお互いをよく知り、情報は瞬くまに広がります。一方、強い結びつきがあるソーシャルな輪はソーシャルネットワーク全体に比べると小さなものであり、仕事の情報においては、新しい機会を見つけることが非常に難しいと言えます。弱い絆は、強い絆のクラスター間のギャップを埋め、新しい情報を広げるのに役立っているのです。
というもの。
違う言葉で置き換えると、親しい友人とは似通った話題について話すことが多いが、新しい情報はちょっと距離のある友人からもたらされる、ということです。当たり前と言えば当たり前ですが。
ネット上のニュースのようなものの場合はまさにそのことがあてはまるはずです。それを示しているのが下の2つのグラフです。
このグラフは、つながりの強さと、情報共有の起こりやすさを示したもので、Facebookのニュースフィードに現れた、親しい友人からの情報が最も共有されていることが分かります。(ここでのつながりの強さは、友人から受けるコメントの数から算出されているとのこと。)
一方もうひとつのグラフは、ニュースフィード上の情報が何回共有されるかが、友人との繋がりの強さによってどう変化するかを示したもの。
これを見ると、繋がりの弱い人の情報の方が数多く共有されていることが分かります(ちょっとややこしいですが、これは繋がりの弱い人の数が多いため、合計としてこうなるという意味だと思います)。
強い絆経由の情報:馴染みのある、日常的に興味のある情報。(影響力のある)繋がりの強い友人経由なので共有が起こりやすい。
弱い絆経由の情報:興味範囲の中心ではない新鮮な情報。繋がりの弱い友人経由なので、共有は起こりにくいが、母数が多いので結果的に数多く共有される。
という整理をすると分かりやすくなり、至極納得のいく内容と言えます。FacebookをはじめとするSNSによって、これまでは出会えなかった多様な情報に、普段接しない人を経由して出合えるようになったということは、私たちも経験上知っていることですね。
リサーチ結果の紹介でも以下のように書かれています。
例えば、100の弱い絆の繋がりがあり、10の強い絆の友人がいるとします。あなたが繋がりの強い友人のものをシェアする可能性はとても高く、例えばそれが50%だとします。一方弱い絆の友人のものは興味がない情報の傾向があるので、共有する可能性を15%ぐらいとしましょう。その場合、弱い絆と強い絆を経由して共有される情報の総量はそれぞれ、100 x 0.15 = 15 プラス 10 x 0.50 = 5 となり、弱い絆経由の方がより多く共有されていることになります。
普段日常的に顔を合わせる、話をする(強い)繋がりからでは得られない情報が、薄く広く繋がっている弱い絆を経由してもたらされる。それがSNSが強化した情報伝達のあり方といえるのでしょう。
ソーシャルメディアを利用する個人にとって、弱い絆の繋がりを増やすことは新しい情報に出合える機会となり、ソーシャルメディアでマーケティングを行う企業にとっては、弱い絆の繋がりを通じて情報の広がりが期待できる。悪くない話ですよね?