2011年11月28日月曜日

Public Relationsを再定義をオープンに行う試み:米PR協会「今の定義は賞味期限切れ」




PR業界におけるアメリカの組織、Public Relations Society of America(PRSA)が、"Public Relation"の再定義を行っています。

PRSAが1982年に定めた定義は、

“Public relations helps an organization and its publics adapt mutually to each other.”(PRとは、組織と公衆とが相互に適応することを支援するもの

というもので、The New York Timesの寄稿記事によると、その後2003年と2007年に新しい定義を作ろうとしたものの、完成にはいたらなかったそうです。(ちなみに、日本PR協会の定める定義はここに公開されています。)

今回PRSAが開始した再定義の作業は公募の形をとっており、オンライン上で多くの人からの意見を募集しています。

公募のフォームはいたってシンプルで、

Public relations (does what)
with/for (whom)
to (do what)
for. (what purpose)
()の部分を記入して投稿するだけ、です。

Twitterでも #PRdefined のハッシュタグで募集告知や会話が行われています。

さて、今回再定義の動きが起きている背景は、ソーシャルメディアを代表とするコミュニケーションの変化があるわけですが、

PRの新しい定義を発見するということは「私たちが知っているものが賞味期限切れ」ということです。

という、PRSAの会長兼CEOのRosanna Fiske氏の言葉が端的に現状を示しています。

その他関係者のコメントからいくつか抜粋を。

ソーシャルメディアの隆盛以前、PRは企業が様々なオーディエンスと共有するメッセージを管理しようとすることを意味していたが、現在PRは常にONの世界における継続する会話の促進をする以上のものであるべきです。(Word of Mouth Marketing Associationの役員の一人Adam Lavelle氏)

普通の消費者が世界中に情報発信できる力をポケットの中に持って歩いている今の世の中、PRと企業コミュニケーションの役割はコンテンツ作りから、他人が作るコンテンツに影響を与えようとすることに変化してきています。ただし、PRは"spin"を行うものというイメージの問題があります。(Argyle Communications社長Tisch氏)

PRSAによる新しいPRの定義募集は12月2日まで行われているそうです。



ご参考

















2011年11月21日月曜日

infographicsを使う時の3つのアドバイス:TVでも紹介されたinfographicの事例とともに




こちらのinfographic、Facebookが人間関係にもたらす悪影響とその対処法に関するテーマで、オンライン上でのデートに関するtipsやアイディアを紹介するOnline Dating Universityによって半年以上前に公開されたものです。

内容の解説はここでは省略しますが、Facebook全体の数字データから、人間関係に特化した情報、自分がどんな状態にあるかなどなど、Facebookと人間関係への影響について多面的に図解で紹介しています。

ところで、日本ではinfographicsはあまりお見かけしませんが、海外ではすでに飽和しているというもあり、infographicsのinfographicによると、

一週間に目にしたinfographicの数は3,274
そのうち単に数字をグラフ化し、色づけしたもの=100%

というようなこともあるようです。

実際Googleの画像検索では17,800,000件のヒット、Flickrでは5500件近くの結果が表示されます。

infographic.jpのように日本でもサービス提供いているところはありますが、まだ積極的に使われるという状況にはないので、あまり参考にならないかもしれませんが、infographicsを使う際のアドバイスについて書かれた記事がなかなか良い内容だったのでご紹介。infographics作りのtipsは色々と書かれてすが、これは一味違うものです。

まず第一に、infographicsは、複雑なものをシンプルにするものでなければなりません。私たちは単にそれができるというだけで、あまりにも頻繁に落書き(infographics制作)をしますが、そうではなく、作るべき時に制作すべきです。結果としてテキストでも十分理解可能な情報を誤って視覚フォーマットで伝えています。infographicsは複雑な情報をわかりやすく伝えるために使用すべきです。
第二に、ビジュアルに込められるのは消費者向けのメッセージではなく、消費者の強いメッセージであるべきです。このことは複数ブランドや特定の話題に関連することのほうが、単一のブランドメッセージを伝えるよりも適しているといえます。顧客に関するinfographicのストーリーを作りましょう、あなたのものではなく。
最後に、グラフィックがソーシャルになると考えるのではなく、ソーシャルがグラフィックになると考えるべきです。Facebookのウォールは金脈です。共通するテーマのコンテンツのストリームを発掘し、豊富なグラフィックとともにフラットな情報に置き換えましょう。それはデジタルの大使館(Facebookページ等のこと)での会話を理解しやすくします。

「顧客に関するinfographicのストーリーを作りましょう、あなたのものではなく」、「ソーシャルがグラフィックになる」など、infographicsだけにとどまらない重要なtipsといえますね。

最初にご紹介したinfographicですが、上の3つのポイントを満たす数少ない事例だと思いますし、Online Dating Universityというサイトの特性とも合致しています。紹介元の一つであるallfacebookの記事は、2000近くシェアされ、多くの共感コメントが寄せられています。さらに、オンラインの話題がきっかけとなりこのinfographicはテレビでも紹介されたようで、infographicsを活用したPRの成功事例と言えます。

筆者は以前「ソーシャルメディア時代の広報ツールとしてのinfographics」というエントリを書いたことがありますが、国内ではメディア側の掲載もあまり見られないことを考慮すると、現時点では海外で認知を高めたい企業にとって有益なツールなのかもしれないですね(「知られざる○○社の実力」的なものとか)。







ご参考
















2011年11月14日月曜日

Google+はソーシャルネットワークではない:Google幹部による公演会での発言




先週から企業やブランド、著名人などが利用するための「ページ」機能の提供開始した「Google+」。公開開始から4カ月ほどが経ったこの新サービスは「Facebook対抗の独自ソーシャルネットワーク」という認識のされ方が一般的だと思いますが、どうもそういうわけではないようです。

11月9日〜11日まで開催されていた、Monaco Media Forumに登壇した、GoogleのChief Business Officer、Nikesh Arora氏が、The Telegraphの質問に対し、こう回答したそうです。

Google+は、私たちにとっては、ソーシャルネットワークではない

以前、Twitterの幹部が「Twitterはソーシャルネットワークではない」と発言したことを彷彿とさせます。ではGoogle+とは何か、という事になりますが、 

それは、Googleが提供する全サービスにソーシャルの要素をもたらすプラットフォームです。YouTubeとGoogle+の連携や、Google検索におけるGoogle+のダイレクトコネクトにみられるように。私たちは人々を一つの場所に集め、それをソーシャルネットワークと呼ぶのではなく、ソーシャルの信号をGoogleの全製品にわたって使えるようにしようとしているのです。

要するにGoogle+とは、製品を横断するソーシャルなレイヤー、ということになると思いますが、この考え方自体は、Google+の開始後に、Edelman DigitalのEVP、David Amano氏が"The Social Layer: Six Thoughts On Where Google Plus Is Going"というエントリで示していたもので、それと同じコンセプトがいわば公式に示された、ということになります(初めてかどうかは知りませんが)。

Google+は、Facebookの直接的な競合にあたるのかどうか、という点についてのテレグラフからの質問に対しては、

「Facebookの機能と競合しているものがGoogle+にもあることは確かだ」とはぐらかした

そうです。

Google+のユーザー数は既に4,000万人に達したと公式発表されており、その増加の速度には目を見張るものがありますが、

Googleにとって、4000万の会員登録はたやすい。写真に関しては、Google+にAndroidとのシンクがあれば、簡単に10億のオーダーにいくだろう。でも、Google+のいわゆる日常的なアクティブユーザ数となると、まだまだ??がつきまとう。(via TechCrunch

という見方があるものも事実。

「Google+はソーシャルネットワークではない」という発言が出ているということは、Facebookとの比較をされたくないのかもしれませんね、少なくともソーシャルを生かした「勝ち」の状況を作れるまではArora氏の発言は、広報の観点からはそのように感じさせるものです。

どのようなポジショニングであるにしても、インターネット上の個人のデータと人の時間とを巡る両者の争いという側面は変わることはないのでしょうが。

ところで、最初にご紹介した、Monaco Media Forumのですが、その公式HPではカンファレンスが行われている間のニュースをpaper.liでまとめて表示する、というなかなかユニークな使い方をしていました。とてもシンプルですが、このような使い方があるんだなぁ、と思いました。


















2011年11月8日火曜日

10000%のトラフィック増を生んだお化け屋敷の事例:長期的な積み重ねが発見されたときのインパクト





カナダのナイアガラの滝にある、Nightmares Fear Factoryという、いわゆるお化け屋敷のような施設が行っているオンラインキャンペーンが、ハロウィンがあった先月話題になっていたようです。

なんでもそのキャンペーンを通じて公式サイトのトラフィックが10月6日から急増し、

デイリートラフィックが午後1時には2倍になり、その日の終わりには10,000%増にまで達した

とのこと。

通常のトラフィックがあまり高くない(公式サイトのデイリーユニークビジターは約600)からでしょうが、これは大きな数字ですね。

他にもこんな数字がプレスリリースで開示されていました。

10月6日以降、Nightmares Fear FactoryのFlickrのView数は、50から300万以上に上昇
FacebookページのLikeは1000から12000に増加
Nightmaresの公式サイトをLikeした人は300から6000に増加

このキャンペーン、何を行っていたかというと、いたってシンプルで、上のようなツアー参加者が驚いている画像を、 FlickrFacebookに投稿できるようにした、ただそれだけのようです。例えば参加者が後日その写真をNightmares Fear FactoryのFacebookページに投稿し、自分やその友人にタグ付けを行う、というような感じです。

シンプルながら、面白いイベントの写真とソーシャルメディアの繋がりというバイラルを生みやすい要素を含んだものといえますね。

さてこのキャンペーン、元記事を見ると、「今年のハロウィンを機に開始した」ようなことが書かれていますが、良く見てみると、Flickrの最初の投稿は"August 11, 2010"、Facebookのほうは"Oct 13, 2010"となっており、実は以前から行っていた施策のようです。


急に注目を集めた理由は、10月6日のBuzzfeedの掲載がきっかけとなり、 ABC Newsや、 The Tonight Show with Jay Lenoなどでも紹介されたためのようです。

ABCのニュース映像などを見ても、面白写真としての紹介で、ハロウィーンとは特に関係なく紹介されていることが分かります。要するに、粛々と続けていたことが、ネット上のある投稿をきっかけに日の目を見ることになった、というケースのようです。

ハロウィンに向けて狙いを定めて「仕掛けた」キャンペーンではなかったわけですが、これはこれでネットらしいちょっといい話、ですね。