2010年6月8日火曜日

BPの原油流出事故とPRクライシス:CEOの失言から人気の「偽」Twitterアカウントまで



メキシコ湾で甚大な原油流出事故を起こしてしまっている、石油のメジャー企業BP(British Petroleum)
そのBPが、PRクライシスに瀕しています。
BPトップはPR史上最悪の失言男」という先週の記事では、CEOトニー・ヘイワードの、例えば下にあるような様々な失言をまとめて掲載しています。
5月14日 英ガーディアン紙に対し、「メキシコ湾は広大だ。海全体の水の量に比べれば、流出した石油と分散剤の量など微々たるものだ」と弁明した
確かにこんな発言をされてしまっては、PR担当のみならず、BPで働く社員全体にとってもたまったものではないと思います。
そんな中、ソーシャルメディアではどうか?
BPはファンやフォロアー数は、企業アカウントとしては特別多くは無いものの、Facebook(ファン約1万5千人)やTwitter(フォロアー約1万2千人)などの公式アカウントを持っています。
特にそれまで3回しか更新していなかったFacebookでは、5月3日以降ほぼ毎日、場合によっては1時間に1回くらいのペースでコンスタントに動画やコメントで、現状の被害回復への取り組みを説明しています。
が、やはりCEOの失言は悪影響を及ぼした模様。特に5/30のトゥデイ・ショー出演時の発言
I want my life back(元の生活を取り戻したい)
は波紋を呼んだようで、この日を境にコメント数も増加している感じです(余談ですが、この発言はなんだか昔の雪印社長の「寝てないんだよ(怒)」に通ずるものがありますね)。実際Facebook上でこの発言に対する謝罪をしていて、(Fワードを含む)300ものコメントが付いています。
また、テレビなどでの失言の悪影響もあってか、BPの公式情報を信用しないという声も多く見られます。原油の流出を防ぐキャップの取り付け成功、という最近の動画に対しても、嘘をつくな、という声が出ています。
Nestleの時同様、下のようなアイコンを使っている人もいます。

一方、頻繁な情報更新の努力や、目の前の危機をなんとかしたい、という気持ちもあってか、BPへの声援が多数見られるのも事実です。
  
こうした状況の中、公式以上の勢力を持っているアカウントがあります。Twitter上のBPの偽アカウント、@BPGlobalPRです。
@BPGlobalPRは、5月19日に
大変遺憾ながら、私たちは(メキシコ)湾岸沖で何かが起こっていることを認めます。今度さらに情報をお知らせしていきます。
We regretfully admit that something has happened off of the Gulf Coast. More to come. 1:07 PM May 19th
というツイートをしたのを皮切りに、
海岸でオイルを見つけた場合は、どうか取り除いたり掃除をしないでください。それはBritish Petroleum社の所有物であり、あなたをきっと訴えるでしょう。
Please do NOT take or clean any oil you find on the beach. That is the property of British Petroleum and we WILL sue you. 4:11 PM May 23rd
というような皮肉たっぷりのツイートをポストし、いまや公式の10倍以上の13万人弱のフォロアーを獲得しています。
その中の人が、先日公式声明を発表しました。
中の人の名前は、"Leroy Stic"。昔近所に住んでいたLeroyという猛犬の対策を、飼い主や警察が何もしないのでついに町中の人が棒をもって犬を叩いて対処した、という話から名づけられたもの。
このTwitterアカウントも、そのときと同じような理由で始めたそうです。 
この話のポイントは、あなたの近所に誰かが脅威を与えるような場合、時には棒を握って振ることは正当なこと。ソーシャルメディア、この場合Twitterは、私のような一般市民にも使うことができて、様々な新しい棒を生み出してくれる。 
The point of this story is that if someone is terrorizing your neighborhood, sometimes it’s alright to grab a stick and take a swing. Social media, and in this particular case Twitter, has given average people like me the ability to use and invent all sorts of brand new sticks.
そしてこのアカウントがここまで人気を得た理由と問題の要点を、中の人はこう説明しています。 
人々はうそを嗅ぎ取ることができて、時として怒ったり、がっかりするよりも笑い飛ばしたほうが気分がいいことがあるからだと思う。少なくとも、それは退屈なルーティンからの息抜きとして受け入れられている。@BPGlobalPRが成長を続けているのは、BPが嘘を垂れ流し続けているからに他ならない。
私は、@BPGlobalPRからブランドを守るためにBPはどうするべきかを考えている、PRやマーケティング担当が書いたこの状況についての記事やブログを数多く読んだが、第一に、誰が気にするだろうか?第二に、あなたは何の業界に属しているのか?私は文字通り海を汚した企業を汚しているわけだが、このバカどもはどうすれば会社を守れるかを考えているというのか?
ポイントは、会社のブランドのことは忘れろ、ということです。それは文字通り空っぽであり、あなたはそれを所有していない。あなたはあらゆる時間と金をつかって、世論を生み出そうとすることはできるが、それは最後は世間が決めることであり、今はそのときではないのでは??
例えば、こんなテレビCMをつくっている場合ではないだろう、ということでしょう。
ちなみに、この動画については「"元の生活を取り戻したい"、と言ったCEOが、"We will get this done. We will make this right.(必ずやり遂げて、正常な状態に戻す)"、という発言をしても全く信頼性がない」というコメントもされています。
「偽アカウントが作られたり、それによる風評被害を避けるために企業の公式アカウントを作りました」、なんて話を聞くことがあります。ソーシャルメディア上にアカウントを作る際に、保守的な会社を説得するための理由としてこういう考え方があるとは思いますし、その効果もあるとおもいます。
が、危機発生時には、今回のように偽アカウントが力を持つような事態が発生することは、早期に自体を収束できない場合以外には、企業側では防ぎきれるものではありませんね。
何よりも事故の早期の解決を祈るばかりです。
追記:最新情報ではABCが、@BPGlobalPR中の人にインタビューをしたようで動画がアップされています。とてもユーモラスでシリアスないいインタビューです。中の人は、元PR会社の社員の方だそうです。
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ご参考: